二十四の瞳2008年01月16日 17:22

たまたま昨年秋、図書館で「人生で一番感動した映画」という表題の本を
見つけ、「二十四の瞳」を真っ先にあげた著名人がおられたので、その方の
ページを開いてみて是非私も鑑賞したいと思った。
これを推薦した作者はこの映画の感想を次のように紹介する。
「全編ただ涙、涙、涙の名作である。
これをしのぐ作品はいまだに私の履歴にない」と。
この著名人の年齢はほぼ私と同世代。
この数行がいたく私をかりたてたのである。
しかしなかなか実現出来ず今日レンタルショップからDVDを借りてきて
やっと願いが果たせた。

この映画は昭和28年に封切られている。
私が小学校2年の時に上映された映画で、当時話題作だった憶えがある。
しかし是非見に連れていってと親に懇願した記憶はないし親もまた連れていく気はなかったようだ。
多分あの頃の世相はまさに映画そのものだったからで格段家族揃って
見に行くほどの内容ではないと判断したからだと思う。
当時はどの家庭も映画が唯一の娯楽で見たい映画がたくさんあった。
また文部省推薦だったのだが、両親は革新的思想になじめなかったの
かもしれない。当時は赤というレッテルをはるそういう古い悪しき戦前から
の慣習が残っていた時代であった。
(小学校高学年ころから私はこの左翼思想におおいに傾倒したし今もそう
だと感じている)

全編にいきかう叙情歌、童謡、これらの音楽を聴いているだけで昔の良き
時代がふつふつとよみがえってくる。
そして作者の感動と寸分の違いもなく共感し涙、涙の2時間半であった。
高峰秀子さんの若く輝かしい美しさに酔いしれ、戦場から盲目となって
みんなの前に姿を現す岡田磯吉役の田村高廣さん、若いころの姿、
美男の姿をみて、この映画が作られた遠い昔を忍ぶことが出来た。

また監督・脚色が木下恵介であるだけに子供達のとらえ方がなんと素晴
らしいことか。
大石先生を追いかける集団の姿がなんと美しいことか。
3人、4人、あるいは2人と距離を置いて全力疾走する姿が万感の映像美
をもって迫ってくる。ここでも感動の連続であった。
今も子供たちの根底にある優しさはなんら昔と変わらない。
現代のすさんだ世の中が今の子供達をだめな方にだめな方にと向かわせ
ていると誰もが思っている。

また木下恵介監督の持ち味ははっきりとした反戦思想である。
戦争は絶対いけない。
現在は中国や北朝鮮と緊張関係にある。日本人はどうも自分たちのこと
を棚に上げて対岸の人たちを軽蔑したり責めたりするが、もっと恥をしらな
ければいけない。
日本にだって悪人はたくさんいる。
日本は戦前どんなに他民族を苦しめたことか。
これはすべて戦争というものが引き起こした結果である。
戦争は人を残虐にさせる。
かくいう私も対岸の人たちが疎ましく思う時があるし、ならば戦争で解決
しようじゃないかと思う時もある。この考えは男ならだれもが共通だ。
闘争本能があるのだ。
女の中にだってそういう考えの人がいるから実に頭にくる。

ひるがえって中国人だって、北朝鮮人だってしかり。
だからこそ踏みとどまらなければならない。
憲法第第9条にある戦争の永遠放棄は心ある国民が絶対死守しなけれ
ばならないのは人間の正義である。
二度と同じ過ちを犯してはいけない。
この映画はそれをはっきりと訴えている珠玉の名作である。